名も無い、花畑でした。

私が花束を作っていたのは。

ちょうど、サクラソウが固まって咲いている場所を見つけて座り込んだときでしたかね。

 

「ん・・・?」

花畑に、モグラ。もしくは小動物でしょうか?

花ががさがさ動いていました。

 

「ぐ!」

その小動物は花から飛び出し、舌を伸ばしたんです。

 

・・・アレは、『魔界の貴公子』のサタンさんが飼っていたというペットの

『カーバンクル』に見えますが・・・?

 

サタンさんらしい人は・・・見つからない。

 

かわりに、大きくため息をついてその『カーバンクル』を見ている少女が見えた。

・・・きっと、サタンさんが飼っている『カーバンクル』とは別の生物なのでしょう。

そういうモンスターもいると聞きますし。

そのことを少し聞いてみましょうか。

 

「こんにちは」

声をかけると、その少女は「んっ?」というような感じで振り向いた。

 

金無垢の瞳に、ちょこんとくくった亜麻色の髪。

白いシャツに左肩と胸だけを覆う青いプロテクター。

青いミニスカートに同じ色のブーツ。

まだまだ幼さを残す顔立ち。

そんな少女だった。

 

「こんな所で、一体何をしているんです?」

「べ、別に何をしてるってワケじゃないんだけど・・・

ただ、迷い込んじゃって・・・」

しどろもどろに答える少女。

 

「大丈夫ですか?

なんなら、街道まで送って差し上げても・・・」

「それは大丈夫。どっから迷い込んだか覚えてるから」

少女はにっこりと笑った。

 

「そっちこそ何してんの?」

「お花を摘んでるんですよ」

「それ、何の花なの?」

純粋な好奇心でキラキラと輝く少女の眼。

となりには(推定)カーバンクルがいる。

 

「この花は『サクラソウ』と言うんですよ」

「誰かにあげるの?彼女とか?」

ここまで純粋な疑問をぶつけられる人は珍しいな、と思いつつ私は答えた。

 

「いいえ。女性ではありますが、初対面です」

「え?」

きょとんとする少女。

 

「会う事がすでにわかっていますしね。

レディーに花を差し上げるのは当然だと思っていますから」

よく考えれば、この少女には差し上げてないんですけど。

「へぇー・・・感心だなぁ」

皮肉なんかじゃ全然無い、ただの感心。

なんだか微笑ましい。

おとぎばなしを聞く子供のようだ。

 

「だったら、なんでサクラソウなの?」

「その方と同じ名前なんですよ」

「そうなんだ・・・」

 

「あ、そーだ。

ボクもサクラソウ集め手伝ってあげよーか?どーせ、暇だし」

たった今の思いつき、深い意味は特に無いって感じの言葉。

「ありがとうございます」

 

少女は、にっこりと笑った。

 

「んじゃ、カーくん。この花見つけたら持って来てね」

「ぐっ!」

その少女の言うところの『カーくん』はとことこ駆けていく。

・・・・速いですね。ざっとみて時速四十〜八十キロでしょうか。

 

「食べちゃダメだよーっ!」

「ぐーーーっ!」

すでに身体は小さすぎて見えないものの、元気なお返事が返ってきた。

 

「そういえば・・・あの生物は『カーバンクル』ですか?」

・・・少なくとも、私は『カーバンクルに似ていて』『ルベルクラクもしくは別の赤い宝石を宿した』

『ぐーと鳴く』『踊り好きで』『舌が長く』『足が速い』『etc』の生物を知りません。

 

「そうだよ? ・・・よく知ってるね」

またきょとんとして、少女が言う。

「・・・何匹もいるものなのですか?」

・・・じゃないと、サタンさんのカーバンクルは? ということになってしまいますし。

 

なのに少女はこんな答えを返した。

 

「え? うーん・・・少なくともボクはあの子以外見たことないなぁ」

 

・・・なら、サタンさんのカーバンクルは?

・・・いや、きっとカーバンクルは珍しい種で、数が少ないゆえに

この方はあのカーバンクル以外のカーバンクルを見たことが無いのでしょう。

 

「あっ!」

その声で私の思考は中断された。

「ここいっぱいサクラソウ咲いてるよ!ほらほらぁっ!」

 

 


 

 

 

「ありがとうございます。おかげでこんなにはやく集まりました」

そういって深々とお辞儀をすると、少女が必死で止める。

「ううん、ボクはそんなに手伝えなかったし、逆に迷惑かけちゃったし・・・」

 

私が下げていた頭を上げると、やっと少女は落ち着いた。

 

「お礼も出来ませんが・・・花がしおれるといけないので、これで。」

そういって、私は魔族特有の翼を広げる。

そういえば、この少女驚きませんね。

 

「また会おうねっ!」

少し浮いた私に、少女が小さく手を振る。

 

笑いかける少女の髪に、花束から取った二・三本のサクラソウをそっとさした。

 

私は宙に舞い上がった。そして振り向き、声をかけた。

 

「また、会いましょう」

そういうと、私は少女に背を向け、飛んでいった。

 

 

―― 少女は、知らない。サクラソウは、別名『プリムローズ』ということを。

 

――そして、男性もまた、知らない。その花束は、プリムローズ・アモルに届けられないことを。

 

 

 

 

FIN・・・?

 

あとがき

テスティスが変。ポチにゃ四コマと感じが違う;

サクラソウの咲いた日をコピーしてそれからがりがりしただけ=超手抜き。(爆)

 

テスティス勘違い道まっしぐら中。

あのカーバンクルはサタン様のカーバンクルと同じなのに・・・。

 

とゆーか、テスティスに翼あるのか?(汗)

 

題名は、当初『プリムローズ・メモリー』だったのに、

私が何度も間違えて『プリムロース・メロディー』というので、こーなりました(爆死)。

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