・・・薄暗くて、なんだか不気味な廊下です。

お化けが出てきてもおかしくない雰囲気。

そんな雰囲気の中、ボウッと・・・なんだか不気味な灯り。

それが、通路のど真ん中にふわふわと浮いています。

アルルが近づくと、その灯りが・・・目を見開きました!

「ぼうっ!!」

「うわ!?」

ひとだまのモンスター、ウィル・オー・ウィスプです!

アルルはびっくりしてしりもちをついてしまいました。

「パチパチッ!パチパチッ!」

そんなアルルに、容赦なく火の粉が降り注ぎます!

それを何とかよけて、

「アイスストーム!」

しかし・・・その呪文は効いてはいないようです。

「パチパチッ!」

また火の粉!

「ラ、ライトニング!」

ライトニングも、アイスストームも、あたってはいるのに全く効いたようにありません。

「ぼうっ」

にやらっと不敵な笑みを浮かべて、ウィル・オー・ウィスプはどんどん近づいてきます!

「ファイヤー!」

今度も聞いてない・・・と、言うよりは。

「ボゥ・・・ボオッ!!!」

ファイヤーを吸収して、ひとまわり大きく・・・!

「・・・・・・っ!」

(魔法が効かないなら、もう逃げるが勝ちっ!)

だだだっ!

「ぼうっ!」

「パチパチッ!」

ぱたんっ!

火の粉の降る廊下の火の粉と同じ色のドアを閉じます。

「ぼぅっ!ぼぅっ!」

ドアすぐ近くにウィル・オー・ウィスプはいるようでしたが、

ドアを通して火の熱さを感じることはありません。

しばらく持ちこたえてくれそうです。

「ふひぃ〜・・・」

アルルはドアを背にしてずるずると座り込みます。

走ったのと熱とで汗がどんどん出てきます。

「どうしよ・・・」

ウィル・オー・ウィスプには、魔法が効かないのです。

かといって、大きくなってしまったウィル・オー・ウィスプの下か横を潜り抜けることなんて無理があります。

(でも・・・多分先代の女王様がいるのはこの奥・・・)

「あ!」

そういえば、小さいドアがもう一つありました。

あのクリーム色の壁にクリーム色のドアだった・・・あのドア。

「あそこに、何かヒントがあるのかな?」

『そうと決まれば』って顔・・・というより全身に書いてあるようです。

アルルは立ちあがり、いまだ開きっぱなしの小さなドアにむかって歩き始めました。

 

クリーム色のドアの中は、またクリーム色の部屋で、とっても狭い。

実際にはそこまで狭くないのでしょうが、

ど真ん中にその部屋の大きさぎりぎりの噴水があるので、かなり窮屈に感じます。

その噴水はとても澄んでいます。

「飲んでも大丈夫かな?」

そういったアルルは、何か調べたりもせず、――調べる方法がないのですが――

すでに手で水を汲んで飲み始めています。

「わぁっ☆

おいしいなぁ、ここの水」

そのまま少しの間、水を飲み続けていましたが、ふと。

「・・・あ!」

(まだ、使ってない魔法がある・・・)

「・・・ホットと、コールド・・・」

もともと、あのモンスターは火の玉のモンスターで。

(水で消えちゃうかも・・・・)

アルルはその窮屈な部屋から出て、ドアを閉じました。

そして、足を肩と同じぐらいに開いて、目を閉じます。

「ダイアキュート!」

オレンジ色の光がアルルを包み、アルルの身体から青い光があふれ出します。

「よぉしっ・・・いっくよーっ!」

急に元気になったアルルは、青い色の光の服をまといながら

赤いドアに向かって走っていきました。

 

「パチパチッ!」

アルルは降り注ぐ火の粉を交わし、

ウィル・オー・ウィスプのすぐそばによりました。

ウィル・オー・ウィスプの上に水色の玉ができ、

その玉はアルルの青い光を取り込んでさらに膨れ上がります。

「ぼうっ!?」

怯えたように火の粉を出し続けるウィル・オー・ウィスプ。

・・・・でも、もう遅い。

火の粉を無視して息を吸い込んでいたアルルは、思いっきり呪文を唱えました!

「コールドッ!!!」

その声を聞いたかのように、水色の玉は一瞬小さくなりまた膨れ上がり、はじけました。

「ぼーっ!!!」

はじけた玉からはとっても冷たい水の爆発。

それは、ウィル・オー・ウィスプの火を消していき・・・

「ぷしゅるるる〜・・・」

残ったのは黒くて丸い、消し炭のようなもの。

それも、ボン!と煙に包まれて消えてしまいました。

「ふう・・・」

アルルはため息をつきました。

その廊下は、一方は前へ、もう一方は右に分かれていました。

どっちもドアがあります。

「・・・前、かな?」

前のドアを開け、中に入ると・・・

「・・・?」

真っ暗。

それに、何故かアルルのかばんが光っています。

アルルがかばんを見ると、それはあの入れた覚えの無い石。

その石をかばんの外に出すと、

アルルの周りが少し明るくなります。

でも、部屋を全部照らすには全然足りず、部屋がどんな形か見えません。

・・・もしかしたら、本当は部屋なんてなくって、

真っ暗闇の中なんじゃないかって気もします。

「・・・あっ!?」

アルルの近くに、女の人が倒れています。

「だっ、大丈夫!?

・・・・あぁっ!?」

アルルがその女の人に触ると、その人はあのハープのように砂になってしまいました。

・・・その砂の中に、アルルぐらい大きなプレートが一枚。

『王女が砂になりしとき、魔の使いは再び現る』

「・・・え?

――――!」

アルルの目の前にいつの間にか人が・・・。

「時の女神様・・・?」

時の女神様を見上げて・・・気づきました!

この時の女神様は黒い髪をしていますが、

本を聞いたり話を聞いたり・・・

その中に出てくる時の女神様は・・・神々しい赤い色。

「・・・時の女神様じゃないんだね」

その言葉を聞いて・・・時の女神様の口が、怪しくゆがみます。

「そのとおりです・・・

私は時の女神などではありません・・・。」

「なんでこんなことしたの!?」

「話す必要はありません。

それに・・・恨みもありませんが・・・

ですが、貴方には・・・消えてもらいます」

――戦闘、開始!

相手はメチャクチャ強そうだっ!

 

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