何かを唱えながら偽者の時の女神様は杖を振りかざすっ!

大きく後ろに跳んでかわした杖の赤い宝玉は、急に槍の先のような形になります。

アルルの足元ぎりぎりに当たってまた上へ跳ね上がった槍は、また鋭く突き出されます!

それは、アルルが持っている光る石の光を受けてキラキラとキレイです。

でも、当然見ている暇はありません!

「ダークライトニング」

突き出されたままの槍の先が黒く光り、真っ黒な電気の線がアルルに襲い掛かります!

「リバイア!」

魔法の障壁をはり、なんとかそれを防ぎます。

「ファイヤーッ!」

ひびわれて今にも壊れそうな障壁を張ったまま、アルルが魔法を唱えます。

偽者の時の女神様は、槍の切っ先を自分の顔に近づけたかと思うと、

また丸い宝玉の形に戻してしまいました。

そしてその杖で何か複雑な模様を描きました。

赤い光が杖からあふれ、その光は描いた模様をそのまま空中に残します。

その模様に触れたファイヤーは、すぐに消えてしまいました。

「ブラックフレア」

宝玉からあふれ出た・・・蒼い闇と炎が混ざり合い、真っ青な炎になりました。

呪文を唱える暇すらなかったアルルは、

あの大きなプレートを投げつけます。・・・力持ちです。

炎とプレートがぶつかり、プレートが燃えながら落ちていきます。

それを見ながらアルルも呪文を完成させます!

「サンダーッ!」

バチバチバチッ!

そのカミナリに、

「ステインシェイド」

黒色の霧が迫り、大爆発!

「アイス!」

ステインシェイドの威力に負けそうになったサンダーに、

氷の魔力を注ぎます。

黒い爆発にサンダーとアイスは完全に飲み込まれてしまったものの、

その爆風の余波はここまでは届きません。

偽者の時の女神とアルルの間の煙が掻き消えるまでのあいだ、

アルルは呪文を唱えていました。

といっても、煙の中から魔法が飛んでこないか見ながらですが。

しかし・・・煙が消えて、そこに見えたのはアルルと同じく

呪文を詠唱している偽者の時の女神。

杖の先が揺らめいて宝玉の赤色がぐちゃぐちゃとなっていて、

丸い形は残っていません。かといって、槍の形でもありません。

そこにはバチバチと、アルルのサンダーより強力そうな電気が宝玉のまわりで踊っています。

その杖はまた複雑な模様を描いていて、その模様もバチバチといっています。

深い色の目は閉じられて、口は呪文を・・・

それも早口で、長くて、難しそうで・・・強そうな魔法の呪文を紡いでいます。

(・・・どうしよう)

ダークライトニングより遥かに強そうな魔法。

ダークライトニングをなんとか防げたのに、これ以上強くなると・・・

おそらく・・・すぐにリバイアも壊してしまうでしょう。

(いや、リバイアを突き抜ける・・・?)

確かに・・・リバイアを突き抜けて、かなりのダメージが来るかもしれません。

もしかしたら、ばたんきゅーじゃすまないかもしれません。

それぐらい相手が強いのは、今までの魔法で十分すぎる程よく分かっています。

(・・・でも・・・。)

「ダイアキュート!」

オレンジ色の光が、アルルを螺旋状に包みます。

それだけでは終わらず、螺旋は光を増し始めます!

(まだまだ足りない!)

そう・・・足りない。

まだまだ足りない。

次の魔法に賭けるには。

その想いがダイアキュートの呪文に乗り、アルルの周りを絡み合っていきます。

(ボク・・・卒園したい!)

足りない。

もっと、もっと、もっと―――

(こんな所で やられたくないっ!)

オレンジ色の光の爆発。太陽の色をしたまばゆい光。

太陽そのものの色をした光。

アルルの身体を幾重に包んでもまだまだ余る、太陽の布のドレス。

(こんな所で やられてちゃ いけないんだ!)

アルルの身体は太陽の様に明るく光り続けます。

その光は・・・サッと青い魔法の光に変わります。

太陽の力を備えた・・・いや、太陽の明るさを備えた色の青。

その中でアルルは目を閉じて、気持ちを落ち着けました。

(ボクは・・・

 ボクは卒園したい!

 卒園して・・・

 一人前の魔導師になるんだっ!)

膨れ上がった想いに、青い魔法の光と呪文のイメージを重ねていきます。

魔力でできたすさまじい風――魔力風――すらも、そのイメージに混ざりこんでいきます。

「ビッグバン」

相手のほうが・・・速い。

その声を聞き、アルルは目を見開きます!

(こんな所で 負けるわけには いかないっ!

 ボクは、一人前の魔導師になるんだっ!!)

「じゅげむっ!!」

ぐ・・・ぐどどおおおおおぉんっ!!!

聖なる爆裂呪文、じゅげむ。

そのじゅげむがビッグバンの魔力と接触し、凄まじい爆発を生み出します!

どぉんっ!

じゅげむはその爆発と偽者の時の女神を貫き、一瞬遅れて爆発します。

キュンキュンキュンッ!

爆発の通った線はダイアキュートの力で青く光り、魔法陣を展開させます!

ドォオオオオオンッ!!!

・・・勢いは、強すぎて。

魔導力がなくなってふらふらとしていたアルルまで、爆風に巻き込みます。

そして――

じゅげむの暴走を必死で抑えていたアルルの意識も、

その爆風に包み込まれていきました。

―― あ・・・がと・・・

 

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